"THE YELLOW ONE"から「キング・オ・ランタン」まで

去る3月21日、サツキさんの新曲「キング・オ・ランタン」が公開されました!
まずはこちらをご視聴ください。
3月にハロウィンとは、やや(やや?)季節外れですが、これは本来、10月31日のハロウィン翌日、11月1日の亞北ネルの誕生日に合わせた楽曲として制作されていたからです。
これで、今年のハロウィンの準備は万全です!
曲調もMVも全体的に好きなのですが、個人的に特に気に入っているのは「未だきっと…」からの部分ですね。
さて、この曲ができた経緯について、サツキさんはXで以下のように語っています。
今回イラストを担当している内の一人のMICCHIはメズマの亞北ネル黒幕説の元になった二次創作を作った方です おれがネルの曲をやるのにはうってつけな人選ってワケ
— サツキ (@32ki_May) March 20, 2026
MICCHIにお願いするにあたってMV制作が初めてそうだったので、元々おれも交流があったSAWTOWNEにアシストを頼んでこの布陣に pic.twitter.com/V1nnrHVszt
ご存じない方もいると思いますので、今回はサツキさんが言及している「亞北ネル黒幕説」と、そのきっかけになった「THE YELLOW ONE」ミームについて解説していこうと思います。
「亞北ネル黒幕説」とは?
端的に言うと、「メズマライザーの黒幕は、実は亞北ネルだった!」という、メズマライザーの二次創作ネタです。
後で解説する「THE YELLOW ONE 」ミームをきっかけに、2024年6月頃から、ネルをメズマライザー風にした動画がいくつか作られるようになりました。
早い段階の例としては、ToriTeruさんによる【Akita Neru ・ Oune Meno】 Mesmerizer / メズマライザー 【亞北ネル・桜音メノ】【カバー】などが存在します。
その中でも特に大きく広まったのが、MICCHIさんが6月19日に公開した以下のショート動画です。
「実は亞北ネルはずっとそこにいて、すべてを操っていた」というこのショート動画は、日本国外を中心に大きくバズりました。
サツキさん本人もこれに気づき、すぐに以下のように言及しています。
海外の方々により「メズマライザー亞北ネル黒幕説」が浮上しているの、面白いですね https://t.co/HlKWKOLrUl
— サツキ (@32ki_May) June 19, 2024
この動画があまりにもバズったため、最初は原曲MVにもネルが出ていると勘違いする人がいたほどです。
そして6月25日、出遅れる形で、私もようやくこのことに気づきます。
当時の私の状況
ある人から教えてもらって、初めてこの状況を知った。
— スミス・ヒオカ/Smith Hioka (@hioka) June 25, 2024
なんでこうなってるのか実はよくわかってないけど、知ってもらえるのはいいことですね。https://t.co/BTjYriQhTR
この時の私の状況をざっと説明すると、しばらく前から活動自体が停滞していたところに、Xがインプレゾンビだらけになって情報収集の意欲も失せ、かなり長いあいだ活動が鈍っていました。
元々そこまで詳しいとは言えないボカロ界隈の事情にも、年単位で疎くなっており、なんならVtuber界隈の方がまだ分かる、という有様でした。
これより少し前の6月21日、XのDMで「ネルが再注目されている」という連絡を受けました。
情報提供をしてくださった初音ミクみくらぶの中の人(ネルネルネ)さんは、メズマライザー亞北ネル黒幕説だけでなく、「GoogleストリートビューJK3人組パロディ」や「サイドテールミクさん」など、同時期のミームの相乗効果もあって、ネルが再注目され始めているという見立てをされていました。
私はこの状況をいまひとつ飲み込めておらず、その様子が上の文面からもにじみ出ています。
あまりにも意味が分からなかったため、自分で状況を調べてみようと、重い腰を上げることになりました。
そして調べていくうちに、だんだんとこの盛り上がりがかなり大きなものだと認識するようになりました。
そこで、この機会に英語での情報発信を試みることにしました。
上のポストの数時間後、翌26日の深夜、私はネルの配色に関するトリビアを英語で投稿しました。
Trivia about Akita Neru's appearance:
— スミス・ヒオカ/Smith Hioka (@hioka) June 25, 2024
The color scheme of her clothing is inspired by the old personal computers NEC PC-6001mkII and its higher-end model, the PC-6601. These computers featured voice synthesis capabilities, with the PC-6601 even being able to "sing."… pic.twitter.com/m3fbstd558
これがなかなか良い反応をいただけたので、そこからしばらくの間、英語での投稿を続けました。
ファンアートも増加傾向にあったため、それまでの低干渉の方針を転換し、いいねやリポストを積極的かつ継続的に行うようにもなりました。
ここから徐々に、たまに英語での投稿を交えつつ、ファン作品をリポストする、現在の投稿スタイルが形作られていきました。
黒幕説がもたらしたもの
元々高い人気を誇っていたメズマライザー関連の二次創作に、本編に登場していないキャラクターが新たな要素を加えた。
この少し奇妙な現象は、その後、サツキさんの次作「オブソミート」へのネルの登場、そして今回の「キング・オ・ランタン」へとつながっていきました。
亞北ネル黒幕説は、それだけにとどまりませんでした。
海外ボカロファンダムにおける亞北ネル再注目の起爆剤となり、その後のネルやとりぷるばか関連の二次創作へとつながっていく、非常に重要な契機になったのです。
長らく停滞していた私自身の活動も、上で書いた通り、大きな転機を迎えました。
この流れは日本のボカロ界隈にも少しずつ波及し、今も国内外でファンアートや動画、楽曲作品が増え続けています。
では、そもそもなぜ結びついたのか?
さて、ここまで黒幕説とその影響について解説してきましたが、ではそもそも、なぜ亞北ネルとメズマライザーが結びつけられることになったのでしょうか。
そこには、亞北ネル黒幕説が生まれる前日譚とも言える「THE YELLOW ONE」ミームが関わっています。
"THE YELLOW ONE" ミーム
2024年6月13日、ある二人のユーザーの何気ないやり取りから、すべては始まりました。
残念ながら、最初のポストの投稿者であるDeshiさんの当時のアカウント(@DeshiSpam)は凍結されており、現在は閲覧できません。
そのため、以前保存していたスクリーンショットをもとに紹介します。
Deshiさんが最初の投稿に添えたのは、ラマーズPの「驫麤~とりぷるばか~」のワンシーン※でした。
(※バーサーカーソウルさんによるアニメ化版です)
これにFailed Vesselさんが返信し、以下のようなやり取りが交わされます。
正確と言えるかは分かりませんが、日本語訳も添えています。

AND THE YELLOW ONE THAT DOESN'T APPEAR IN MESMERIZER SO I DON'T REMEMBER HER
— Failed Vessel 🍉 Comms open (@FailedDumbFuck) June 12, 2024
この最後のポストを、非常に精力的な海外ネルファンの一人であるToriTeruさんが引用リポストします。
後に、先ほど触れたカバー動画を投稿することになる方です。
THE YELLOW ONE THAT DOESN'T APPEAR IN MESMERIZER 😭😭😭😭 https://t.co/laQxHPuvwY pic.twitter.com/5jdq5QJDRL
— ToriTeruネルネルネルミク☆ (@moakitaneru) June 12, 2024
このポストでは、引用元の文章から特に
"THE YELLOW ONE THAT DOESN'T APPEAR IN MESMERIZER"
というフレーズが抜き出されていました。
この引用リポストをきっかけに、ネルファン、そしてかつて子どもの頃にネルに親しんだ人たちの間で大きな反応が広がります。
Failed Vesselさんの元ポストのリプライ欄や引用リポストには、大げさで冗談めいた反応から、ネルを紹介するもの、怒りや悲しみを表明するものまで、実にさまざまな反応が見られました。
この「THE YELLOW ONE」の投稿では、とりぷるばかのワンシーンから始まり、ミクテトの組み合わせで大人気のメズマライザーが引き合いに出されたことで、「亞北ネルの不在」という側面が強調されました。
その結果、本来無関係だった二つが、ここで接続されることになったのです。
前半で触れた通り、これ以降、亞北ネルとメズマライザーを組み合わせた二次創作がいくつか生まれます。
そしてその中でもMICCHIさんのショート動画が大きくバズり、その後の流れを決定づけました。
創作の連鎖として見た時に
ここから生まれた流れは、亞北ネルやとりぷるばかと接続された「創作の連鎖」を形づくり、今回投稿された「キング・オ・ランタン」をはじめ、さまざまな創作物へと直接的・間接的に派生していきました。
名前を忘れられた黄色い子が、ネットユーザーの喧騒とクリエイティビティの中から、再びその名を取り戻した。
そう考えると、ボカロ界隈に残っていて本当に良かったと思えます。
かつて自分が最も確かめたかった、UGCの可能性と創作の連鎖を、こんな形で再び目の当たりにする日が来るなんて。
しかも、その出発点が日本国外からになるなんて、まったく想像もしていませんでした。
今この瞬間も、世界中の方々が亞北ネルをさまざまな形で表現してくださっていることに、心から感謝申し上げます。
おわりに、そして次回予告
「キング・オ・ランタン」が投稿された時、これは書かなくてはと思い、すぐにでも投稿するつもりでした。
ですが、ずいぶん時間が空いてしまいました。
次回はさらに、私個人の視点から「THE YELLOW ONE」がミーム化した理由の考察や、それがほかにどのような影響を及ぼしたのかについても、解説してみたいと思います。

